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鹿児島・ガス爆発の家――「熱い」と呟く声

ある夜、二人の男が、鹿児島県指宿市にある古い廃屋を見に行った。 そこは、地元で「ガス爆発の家」と呼ばれている場所だった。 かつては大きな屋敷だったらしいが、今では建物の多くが崩れ、草木に覆われている。 この家には、昔、ガス爆発によって一家が亡くなったという噂がある。 そして、夜になると―― 焼けただれた男の姿を見る。 そんな話まで囁かれていた。 もちろん二人は、ただの噂だと思っていた。 「幽霊なんているわけないだろ」 そう言いながら、懐中電灯を片手に、家の前まで近づいた。 時刻は午前一時を過ぎていた。 門の奥は真っ暗だった。 風が吹くたびに、伸び放題になった草がガサガサと音を立てる。 そのときだった。 「……おい」 後ろを歩いていた男が立ち止まった。 「何?」 「今、誰かいたぞ」 二人で振り返った。 道路には誰もいない。 車のライトにも、人影は映っていなかった。 「見間違いだろ」 そう言って、再び廃屋へ向かった。 だが、その直後。 家の奥から―― カン…… という小さな音が聞こえた。 金属を何かで叩いたような音だった。 二人は顔を見合わせた。 「中、誰かいるんじゃないか?」 「まさか……」 音はもう一度鳴った。 カン…… 今度は、明らかに家の中からだった。 恐る恐る懐中電灯を向ける。 崩れた壁。 黒く汚れた柱。 そして、その奥に残っている暗い部屋。 何もいない。 そう思った瞬間だった。 「……熱い」 突然、後ろから声がした。 二人とも凍りついた。 今の声は―― 間違いなく、すぐ後ろから聞こえた。 振り返る。 誰もいない。 しかし、一人が懐中電灯を自分の腕に向けた瞬間、顔色が変わった。 腕に、赤い手形がついていた。 まるで誰かに強く握られたような跡だった。 「帰ろう」 二人は急いで車へ戻った。 エンジンをかけ、ライトを点ける。 そして車を発進させようとした、その瞬間。 助手席の男が、フロントガラスの先を見て固まった。 「……あれ」 廃屋の門の前に、男が立っていた。 全身が黒く見える。 ただ、顔だけが妙に白い。 男は二人をじっと見ていた。 そして―― ゆっくりと口を開いた。 声は聞こえない。 だが、二人にはなぜか、その言葉が分かった。 「まだ……いる」 男はそう言っているように見えた。 次の瞬間、車の中に焦げたような臭いが充満した。 「窓閉めろ!」 慌てて窓を閉める。 ...

西郷洞窟――最後の声

鹿児島市の山あいに、ひっそりと口を開ける洞窟がある。 そこは、かつて西郷隆盛が最後の日々を過ごした場所として知られている。 今では観光地になっているが、地元では昔から、こんな噂が囁かれていた。 「夜の洞窟から、人の声が聞こえる」 ある夏の夜、二人の若者が肝試しに訪れた。 時計は午後11時を過ぎていた。 昼間なら観光客の姿もある場所だが、夜になると辺りは異様なほど静かだった。 懐中電灯を照らしながら洞窟へ近づいた、そのとき。 「……誰か、いる?」 奥から、かすかな声が聞こえた。 二人は顔を見合わせた。 誰かが先に入っているのだと思った。 「すみません!」 返事はない。 しかし、数秒後―― 「……まだ、帰れん」 確かに声が聞こえた。 しかも、その声は洞窟の奥ではなく、二人のすぐ後ろから聞こえた。 振り返る。 誰もいない。 恐ろしくなった二人は、急いで洞窟から離れようとした。 その瞬間、懐中電灯が消えた。 真っ暗闇の中で、今度ははっきりと足音が聞こえた。 ……ザッ。 ……ザッ。 ……ザッ。 誰かが、ゆっくりこちらへ歩いてくる。 「逃げろ!」 二人は暗闇の中を走った。 洞窟の出口に差しかかったとき、後ろから低い声がした。 「……ここを、頼む」 二人は振り返らなかった。 そのまま車まで走り、震えながらその場を離れた。 翌朝。 二人が撮影していた動画を確認すると、奇妙なことに気づいた。 洞窟の入口で撮影を始めた直後の映像。 そこには二人しか映っていない。 しかし、二人の間にある暗闇の奥から、白い人影がゆっくり近づいてきていた。 そして動画の最後。 画面には誰もいないはずの洞窟が映っていた。 そこから、小さな声が録音されていた。 「……まだ、終わっていない」 それ以来、二人は二度と西郷洞窟へ行かなかった。 そして地元では今も、夜の洞窟から聞こえる声について、こんな話が残っている。 ――あの洞窟では、夜になると「帰れ」と言う声が聞こえる。 だが、本当に恐ろしいのは、その声を聞いた人ではない。 「帰れ」と言われたのに、振り返ってしまった人だ。

『城山展望台のもう一人』

夜の城山展望台は、昼間とはまるで別の場所だった。 街の明かりを見下ろしながら、男は一人、展望台の階段を上っていた。 時計は午前0時を過ぎている。 「さすがに誰もいないか……」 そう呟いた瞬間、背後から―― コツ……コツ…… 階段を上ってくる足音が聞こえた。 誰かいる。 男が振り返る。 しかし、そこには誰もいない。 「……気のせいか」 そう思って展望台へ向かう。 ところが、足音は止まらなかった。 コツ……コツ……コツ…… 今度は、すぐ後ろから聞こえる。 男は怖くなり、振り返らずに走った。 そして展望台に出た瞬間、スマートフォンが鳴った。 知らない番号だった。 恐る恐る電話に出る。 『……後ろ、見ないで』 女の声だった。 男の背筋が凍る。 「誰ですか?」 返事はない。 ただ、電話の向こうから小さな声が聞こえた。 『あなた……一人で来たんじゃないよ』 その瞬間。 男の肩に、冷たい手が置かれた。 「……!」 反射的に振り返る。 そこには誰もいなかった。 慌てて展望台から逃げ出し、車に飛び乗る。 エンジンをかけたところで、スマートフォンに一枚の写真が届いた。 さっきの展望台から撮影された写真だった。 そこには、街の夜景と、展望台に立つ男の姿。 そして―― 男のすぐ後ろに、知らない女が立っていた。 青白い顔でこちらを見つめながら、女は口元だけをゆっくり動かしていた。 写真を拡大すると、女の口がこう言っていた。 「次は振り返らないでね」 その夜以来、男は二度と城山展望台へ行かなかった。 しかし、数年後。 昔のスマートフォンに残っていたその写真を確認すると―― 女の姿は消えていた。 代わりに、写真の隅にもう一人。 男の後ろに立つ、別の人影が写っていた。

城山公園――写真に写った少女

夜の城山公園は、昼間とはまるで別の場所だった。 木々に囲まれた遊歩道には人影がなく、遠くに見える鹿児島市街の明かりだけが、暗闇の中でぼんやりと瞬いている。 「なあ、ここ、本当に出るの?」 友人の健太が笑いながら言った。 俺はスマートフォンを取り出した。 「有名らしいぞ。写真を撮ると、おかっぱの女の子が写るんだって」 「そんなわけないだろ」 そう言いながら、健太がカメラを構えた。 カシャッ。 何の変哲もない公園の風景。 二人で画面を確認する。 「ほら、何も――」 健太の声が止まった。 「……おい」 「どうした?」 健太は画面の右端を指差していた。 そこには、木の陰に立つ小さな女の子が写っていた。 おかっぱ頭。 白っぽい服。 そして、こちらをじっと見つめている。 「……撮った?」 「いや」 俺は即答した。 「俺たち以外、誰もいなかっただろ」 二人とも黙った。 気味が悪くなり、すぐに公園を出ようとした。 そのときだった。 「……ふふっ」 背後から、小さな笑い声が聞こえた。 振り返る。 誰もいない。 「今、聞こえたよな?」 健太が震えた声で言った。 俺は答えなかった。 なぜなら―― 俺の耳元でも、はっきり聞こえていたからだ。 「……一緒に遊ぼう」 その瞬間、二人は一気に走り出した。 駐車場まで戻り、車に乗り込む。 ドアを閉め、エンジンをかける。 「早く!」 健太が叫ぶ。 車を走らせ、公園から離れた。 しばらくして、ようやく二人とも落ち着きを取り戻した。 「……さっきの写真、消そう」 健太がスマートフォンを取り出した。 しかし―― 写真は消えていた。 「消した?」 「いや……」 俺たちは顔を見合わせた。 そして健太が、青ざめた顔で言った。 「一枚、増えてる」 画面に表示された写真。 それは、さっきの公園の写真だった。 だが、今度は違った。 中央に俺たち二人が立っている。 そして、その背後。 すぐ後ろに―― あのおかっぱ頭の少女が立っていた。 しかも、最初の写真よりずっと近い。 少女は笑っていた。 そして写真の端には、もう一人。 白い服を着た女が写っていた。 その女は少女の肩に手を置き、こちらを見ている。 俺たちは言葉を失った。 すると、スマートフォンから突然、 「ふふっ」 という声が流れた。 二人ともスマートフォンには触れていない。 それなのに、少女の笑い声が部屋いっぱいに響...