東佐賀のマンション――隣の部屋から聞こえる声
これは、佐賀市の東佐賀にあるマンションで起きたという、少し変わった話だ。 そのマンションに住んでいた男性は、仕事の都合で夜遅く帰宅することが多かった。 築年数はそれなりに経っていたが、部屋の中はきれいで、家賃も手頃だった。 ただ、一つだけ気になることがあった。 隣の部屋から、夜になると妙な音が聞こえてくるのだ。 最初は、誰かが生活している音だと思っていた。 壁を擦るような音。 小さな物を床に落とすような音。 そして、ときどき……低い声。 「……まだ?」 男性は、最初こそ気にしなかった。 しかし、その声は毎晩のように聞こえてくる。 しかも、時間は決まって午前二時過ぎ。 ある晩、男性は眠れず、ベッドの上でスマートフォンを見ていた。 すると隣の壁から、 コン…… コン…… と、二回だけ音がした。 しばらくして、 コン…… 今度は三回。 男性は少し気味が悪くなった。 だが、その直後だった。 壁の向こうから、はっきりと声が聞こえた。 「そこにいるの?」 男性は息を止めた。 自分に向けて話しかけているように聞こえたからだ。 しばらく黙っていると、また声がした。 「……聞こえてるんでしょ?」 男性は返事をしなかった。 そのまま布団をかぶり、朝になるのを待った。 翌朝、管理会社に連絡し、隣の部屋について尋ねてみた。 すると担当者は少し困ったような声で、 「隣ですか……?」 と聞き返した。 「はい。夜中に人の声がするんです」 しばらく沈黙したあと、担当者は言った。 「その部屋、今は空室ですよ」 男性は言葉を失った。 念のため、いつから空室なのか聞いてみると、 「半年以上、誰も入っていません」 そう答えられた。 その日の夜。 男性は怖かったが、確かめるために壁に耳を当てた。 何も聞こえない。 午前一時。 二時。 二時半。 やはり何も起きなかった。 男性は少し安心して、ベッドに入った。 その瞬間だった。 枕元から、 「……隣じゃないよ」 と、声がした。 男性は飛び起きた。 部屋の中には誰もいない。 そして、声がした場所は―― 壁ではなかった。 自分のベッドの下だった。 男性は恐ろしくなり、その夜は部屋から逃げ出した。 翌日、荷物をまとめてマンションを出ることにしたという。 最後に部屋を確認していると、壁際に置いていた家具を動かしたとき、壁紙の一部が少し剥がれていることに気づいた。 その隙...