城山公園――写真に写った少女
夜の城山公園は、昼間とはまるで別の場所だった。
木々に囲まれた遊歩道には人影がなく、遠くに見える鹿児島市街の明かりだけが、暗闇の中でぼんやりと瞬いている。
「なあ、ここ、本当に出るの?」
友人の健太が笑いながら言った。
俺はスマートフォンを取り出した。
「有名らしいぞ。写真を撮ると、おかっぱの女の子が写るんだって」
「そんなわけないだろ」
そう言いながら、健太がカメラを構えた。
カシャッ。
何の変哲もない公園の風景。
二人で画面を確認する。
「ほら、何も――」
健太の声が止まった。
「……おい」
「どうした?」
健太は画面の右端を指差していた。
そこには、木の陰に立つ小さな女の子が写っていた。
おかっぱ頭。
白っぽい服。
そして、こちらをじっと見つめている。
「……撮った?」
「いや」
俺は即答した。
「俺たち以外、誰もいなかっただろ」
二人とも黙った。
気味が悪くなり、すぐに公園を出ようとした。
そのときだった。
「……ふふっ」
背後から、小さな笑い声が聞こえた。
振り返る。
誰もいない。
「今、聞こえたよな?」
健太が震えた声で言った。
俺は答えなかった。
なぜなら――
俺の耳元でも、はっきり聞こえていたからだ。
「……一緒に遊ぼう」
その瞬間、二人は一気に走り出した。
駐車場まで戻り、車に乗り込む。
ドアを閉め、エンジンをかける。
「早く!」
健太が叫ぶ。
車を走らせ、公園から離れた。
しばらくして、ようやく二人とも落ち着きを取り戻した。
「……さっきの写真、消そう」
健太がスマートフォンを取り出した。
しかし――
写真は消えていた。
「消した?」
「いや……」
俺たちは顔を見合わせた。
そして健太が、青ざめた顔で言った。
「一枚、増えてる」
画面に表示された写真。
それは、さっきの公園の写真だった。
だが、今度は違った。
中央に俺たち二人が立っている。
そして、その背後。
すぐ後ろに――
あのおかっぱ頭の少女が立っていた。
しかも、最初の写真よりずっと近い。
少女は笑っていた。
そして写真の端には、もう一人。
白い服を着た女が写っていた。
その女は少女の肩に手を置き、こちらを見ている。
俺たちは言葉を失った。
すると、スマートフォンから突然、
「ふふっ」
という声が流れた。
二人ともスマートフォンには触れていない。
それなのに、少女の笑い声が部屋いっぱいに響いた。
そして最後に――
耳元で、あの声がした。
「……また来てね」
翌朝。
俺が昨夜の写真を確認すると、そこにはもう少女も女も写っていなかった。
ただ、俺たち二人の後ろにある木の陰だけが、不自然に黒くなっていた。
そして写真を拡大すると――
木の陰から、小さな手が一本だけ伸びていた。
まるで、
「こっちへおいで」
と手招きするように。
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