金甲山の怖い話「夜道に立つ女」

岡山県にある金甲山。

昼間は瀬戸内海を見渡せる美しい山ですが、夜になると雰囲気が一変すると言われています。

ある夏の夜、若い男性が友人と二人で金甲山へドライブに向かいました。

時刻は午前1時を過ぎていました。

山道をしばらく走っていると、車のヘッドライトの先に、白い服を着た女性が立っているのが見えました。

「こんな時間に、女の人?」

友人がそう言った瞬間、女性はゆっくりと道路の中央へ歩き出しました。

運転していた男性は慌ててブレーキを踏みました。

しかし――

女性の姿は、突然消えてしまったのです。

「……今、見たよな?」

二人は顔を見合わせました。

怖くなった二人は、そのまま山を下りようとしました。

ところが、何度走っても同じ場所に戻ってきます。

そして三度目。

今度は、先ほどの女性が道路脇に立っていました。

ただし、さっきとは違いました。

女性は二人に背を向けています。

そして、ゆっくりと振り返りました。

その顔を見た瞬間、運転していた男性はアクセルを踏み込みました。

女性の顔には――

目も鼻も口も、何もなかったのです。

必死に山を下り、ようやく麓までたどり着いた二人。

安心して車を停めた、そのときでした。

後部座席から、

「……まだ、山にいるよ」

女の声が聞こえました。

二人は恐る恐るバックミラーを見ました。

そこには、誰も乗っていません。

しかし、後部座席の窓には――

内側から、真っ白な手形がいくつも残っていたそうです。

それ以来、二人は二度と金甲山へ夜に近づくことはなかったといいます。

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