城山公園――夜の展望台

これは、ある男性が城山公園で体験したという話だ。

その男性は、仕事で嫌なことが続いていたある夜、気分転換をするため、車で城山公園へ向かった。

時刻は午後11時を過ぎていた。

公園に着くと、周囲にはほとんど人の気配がなかった。

昼間なら景色を楽しむ人もいる場所だったが、夜になると印象は一変する。

街灯の少ない道を抜け、男性は展望台の近くまで歩いていった。

そこから見える街の明かりを眺めていると、突然、

「……カン」

乾いた金属音が聞こえた。

男性は振り返った。

しかし、誰もいない。

気のせいだと思い、再び景色を眺めた。

すると今度は、

「……カン、カン」

先ほどより近い。

まるで誰かが、手すりを指で叩いているような音だった。

男性は少し怖くなり、スマートフォンのライトを点けた。

周囲を照らしてみても、何もない。

ところが、ライトを消した瞬間だった。

展望台の階段の下から、

「……まだ、帰らないの?」

という声が聞こえた。

男性は凍りついた。

声は若い女性のようだった。

だが、階段の下には誰もいない。

「誰かいるんですか?」

恐る恐る声をかけても返事はない。

男性は急いで車へ戻ろうとした。

階段を下り、公園の道を歩いていると、背後からまた声がした。

「待って……」

今度は、すぐ後ろだった。

男性は振り返らなかった。

そのまま早足で歩き続けた。

すると今度は、背後から、

カン……。

カン……。

カン……。

金属を叩く音が、一定の間隔でついてくる。

男性が走り出すと、音も速くなる。

カン、カン、カン――。

車まであと少し。

そこで男性は、どうしても気になってしまった。

ほんの一瞬だけ、後ろを振り返った。

誰もいない。

だが、展望台の方向を見ると、暗闇の中に人影が立っていた。

こちらを向いている。

顔は見えない。

男性は慌てて車に乗り込み、エンジンをかけた。

そして、そのまま公園を出た。

翌朝、男性は昨夜のことを確かめるため、スマートフォンの写真を確認した。

展望台で撮った写真が一枚だけ残っていた。

何気なく撮影した、夜景の写真だった。

しかし、拡大してみると――

展望台の手すりの向こうに、黒い人影が写っていた。

そして、その人物の手は、

まるでこちらを呼ぶように、

ゆっくりとこちらへ伸びていた。

男性はその写真をすぐに削除した。

それ以来、夜の城山公園には近づいていないという。

ただ、一つだけ奇妙なことがある。

その夜以降、男性のスマートフォンには、誰も撮影した覚えのない写真が時々保存されるようになった。

どの写真にも、暗い展望台が写っている。

そして写真の隅には必ず、

あの手すりが写っている。

まるで、

「まだここにいる」

と伝えるように。

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