貝殻山の怖い話「夜の山道に立つ女」
岡山県と玉野市の境にある貝殻山。
昼間は瀬戸内海を一望できる美しい場所だが、夜になると人の気配はほとんどなくなる。
これは、ある男性が友人と二人で貝殻山を訪れたときの話だ。
その日は深夜。
二人は車で山道を走りながら、夜景を見られる場所を探していた。
しばらく進むと、ヘッドライトの先に、一人の女が立っているのが見えた。
白い服を着た女だった。
「こんな時間に歩いてる人なんて珍しいな」
友人がそう言った。
しかし、車が女の横を通り過ぎようとした瞬間――
女がこちらを向いた。
顔は、真っ白だった。
そして、車の中をじっと見つめていた。
「……今の見た?」
二人は同時に振り返った。
だが、そこには誰もいない。
怖くなった二人は、そのまま山を下りることにした。
ところが、数分走ったところで、友人が突然言った。
「……おかしい」
「何が?」
友人は震えながら、後部座席を指差した。
「さっきの女……」
そこには誰もいない。
しかし、後部座席の窓には――
真っ白な手形が、いくつも付いていた。
しかも手形は外側ではなく、
車内側のガラスについていた。
二人は無言のまま車を走らせた。
そして山を下り、街灯のある場所まで来たときだった。
カーナビが突然、勝手に再起動した。
画面には現在地ではなく、
「貝殻山」
という文字が表示されていた。
さらに、その下には見覚えのない目的地が設定されていた。
――「展望台」
友人が慌ててナビを消した。
すると、車内の後ろから、
「……ねえ」
女の声が聞こえた。
二人は振り返れなかった。
その声は、すぐ後ろから聞こえていた。
「……忘れ物、ない?」
その瞬間、車の後部座席から、
コン……コン……
と、窓を叩く音がした。
二人は一度も振り返らなかった。
そのまま車を走らせ、ようやく自宅へ戻った。
翌朝、恐る恐る車を確認すると、後部座席には何もなかった。
ただ一つだけ。
座席の上に、見覚えのない小さな貝殻が置かれていた。
そして、その貝殻には黒い文字で、
「また夜に来てね」
と書かれていたという。
それ以来、二人は二度と貝殻山へ行っていない。
しかし――
友人のスマートフォンには、今でも時々、
深夜になると知らない番号から電話がかかってくる。
電話に出ると、決まって聞こえるのは、
山の中で聞いた、あの女の声。
「……忘れ物、取りに来ないの?」
という一言だけだという。
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