西部公園――夜のベンチに座る女

深夜一時過ぎ。

友人と二人で、西部公園へ向かった。

昼間なら桜や木々がきれいな、どこにでもある公園だ。

しかし、その日は妙に静かだった。

車を降りると、風もないのに木々がざわざわと揺れている。

「……なんか、ここ怖くない?」

友人がそう言った。

僕は笑ってごまかした。

「心霊スポットって聞いたから、そう感じるだけだろ」

二人で公園の奥へ進んでいく。

しばらく歩くと、街灯に照らされたベンチが見えた。

そこに――

女が座っていた。

長い髪を垂らし、こちらに背を向けている。

「こんな時間に?」

僕が声をかけようとした、その瞬間。

女がゆっくり振り返った。

顔は見えなかった。

髪の隙間から見えたのは、異様に白い肌だけだった。

「……帰って」

小さな声だった。

僕たちは思わず立ち止まった。

そして友人が僕の腕をつかんだ。

「おい……今、あの女……」

「何?」

「足、見た?」

僕はもう一度ベンチを見た。

女の足元には――

何もなかった。

まるで地面から数十センチ浮いたまま、ベンチに座っているように見えた。

僕たちは慌てて逃げ出した。

車まで戻り、エンジンをかける。

そのとき、友人が震える声で言った。

「……後ろ」

バックミラーを見る。

誰もいない。

「何もいないじゃん」

そう言った直後。

車の後部座席から、

コン……。

と、小さな音がした。

二人とも固まった。

もう一度、

コン……コン……。

今度ははっきり聞こえた。

まるで誰かが、車の内側から窓を叩いている。

怖くなった僕は、アクセルを踏み込んだ。

公園を離れ、しばらく走ったところで、ようやく音が止まった。

翌朝。

友人から一枚の写真が送られてきた。

昨夜、僕たちが公園で撮った写真だった。

そこには、街灯とベンチが写っていた。

そしてベンチの後ろ。

木々の暗闇の中に、

白い顔をした女が立っていた。

僕たちをじっと見つめながら。

写真を拡大して、僕は気づいた。

女には――

足がなかった。

それ以来、僕は夜の西部公園には近づいていない。

ただ、友人は今でも言う。

「あの夜、車に乗ったのは二人だけじゃなかった」

「後部座席に、誰か座ってたんだ」

あのとき聞こえた、

コン……コン……という音。

あれは窓を叩いていた音ではなかった。

車の中から、

誰かがこちらに気づいてほしくて、

ずっと叩いていた音だったのだ。

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