大阪城公園――夜の石垣に立つ影
大阪城公園には、夜になると人の気配が急に消える場所がある。
これは、そんな場所で起きたという話だ。
ある夏の夜、私は友人と二人で大阪城公園を歩いていた。
昼間なら観光客で賑わっている道も、夜になると驚くほど静かだった。
遠くから車の音が聞こえるだけで、木々の間には風の音しかない。
「せっかくだし、城の近くまで行ってみよう」
友人にそう言われ、私たちは石垣沿いの細い道へ入った。
しばらく歩いていると、友人が突然立ち止まった。
「……今、誰かいたよな?」
前方には、石垣と木々があるだけだった。
「気のせいじゃない?」
そう言って歩き出そうとした、そのとき。
石垣の上から、
コン……。
小さな音が聞こえた。
二人で顔を上げる。
すると、石垣の上に人影が立っていた。
黒っぽい服を着た、細長い人影。
こちらを見下ろしているようだった。
「誰だ?」
友人が声をかけた。
しかし、人影は動かない。
次の瞬間――
その影が、ゆっくりとこちらに背を向けた。
そして石垣の向こうへ消えた。
「……降りたのか?」
私たちは恐る恐る石垣の先へ回った。
だが、そこには誰もいなかった。
人が隠れられるような場所もない。
友人は黙ったまま、スマートフォンのライトを地面に向けていた。
すると突然、
「おい……」
友人が小さな声を出した。
「どうした?」
友人が指差した先。
地面には、濡れたような足跡が残っていた。
一つ。
また一つ。
足跡は私たちが歩いてきた方向ではなく、石垣の下から続いていた。
そして――
私たちの目の前で途切れていた。
その瞬間、背後から、
ザッ……。
誰かが砂利を踏んだ。
二人とも振り返った。
誰もいない。
しかし、今度ははっきり聞こえた。
ザッ……ザッ……。
足音が近づいてくる。
私たちは何も言わず、走ってその場を離れた。
公園の明るい場所まで戻ったところで、ようやく立ち止まった。
友人が息を切らしながらスマートフォンを確認すると、先ほど撮った写真が一枚だけ残っていた。
石垣を撮影しただけの写真だった。
しかし、よく見ると――
石垣の上に、人影が写っていた。
しかもその影は、私たちが見た場所とは違う。
写真の中では、
私たちのすぐ後ろに立っていた。
それ以来、友人は夜の大阪城公園には近づかなくなったという。
大阪城公園には長い歴史があり、夜の静かな園内には独特の雰囲気が漂う。
あの日、石垣の上にいたものが何だったのか。
今でも、二人には分からない。
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