東山トンネル――出口に立つ人

深夜、友人と二人で東山トンネルを車で通ったときの話です。

その日は夜遅くまで遊んでいたため、帰り道には誰もいませんでした。

トンネルに入ると、車内の空気が妙に重くなりました。

「なんか、ここ暗くない?」

友人がそう言いました。

確かに、照明はあるはずなのに、前方だけが異様に暗く見えます。

しばらく走っていると、トンネルの出口付近に人影が見えました。

黒い服を着た人物が、道路の端に立っています。

「こんな時間に人?」

そう思いながら車を進めました。

ところが、近づいてもその人物は動きません。

そして車が横を通り過ぎる瞬間――

その人物が、ゆっくりこちらを振り向きました。

顔は見えません。

ただ、車の中を覗き込むように、首だけがこちらへ向いていました。

「今の……見た?」

友人に聞きました。

しかし返事がありません。

隣を見ると、友人は青ざめた顔で後ろを見ています。

「……まだいる」

その一言で、背筋が凍りました。

バックミラーを見ると、さっきの人影が道路の中央に立っています。

しかも、こちらを追いかけるように少しずつ近づいていました。

慌ててアクセルを踏み、トンネルを抜けました。

しばらく走ってから、ようやく車を止めます。

そして二人で後ろを確認しました。

当然、そこには誰もいません。

「見間違いだったのかな」

そう言って帰ろうとしたとき、友人が突然黙り込みました。

「……待って」

「どうした?」

友人は震える手で、車の後部座席を指差しました。

そこには、濡れた足跡が残っていました。

トンネルから出てきたばかりなのに、後部座席へ向かって――

二人分の足跡ではなく、三人分の足跡が続いていたのです。

それ以来、友人は東山トンネルを二度と通らなくなりました。

そして今でも、あのトンネルを夜に通ると、車の後ろから誰かが覗き込んでいるような気がするそうです。

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