立川稲荷神社――鳥居の向こうから聞こえる足音

夜の立川稲荷神社には、昼間とは違う空気が漂っている。

これは、ある男性が仕事帰りに神社の前を通ったときの話だ。

その日は帰宅が遅くなり、時計を見ると午前0時を少し過ぎていた。

近道をするため、男性は神社の脇を通ることにした。

境内はほとんど真っ暗だった。

街灯に照らされた鳥居だけが、ぼんやりと浮かんでいる。

そのときだった。

「……カツン」

鳥居の奥から、何かを踏むような音が聞こえた。

男性は足を止めた。

誰かいるのかと思い、目を凝らす。

しかし、境内には人影がない。

気のせいだと思い、そのまま歩き出した。

すると――

「カツン……カツン……」

今度は、はっきり聞こえた。

足音だった。

しかも、その音は少しずつ近づいてくる。

男性は振り返った。

だが、そこには誰もいない。

「……?」

不思議に思いながら再び歩き出す。

すると足音も止まった。

そして数秒後。

「カツン……」

また一歩。

「カツン……」

さらに一歩。

男性は怖くなり、早足で神社から離れた。

ところが、足音は一定の距離を保ったまま、後ろからついてくる。

男性は意を決して振り返った。

その瞬間――

鳥居の下に、白い服を着た人影が立っていた。

顔は見えない。

ただ、こちらをじっと見ているようだった。

男性が目をそらし、もう一度見ると――

人影は消えていた。

急いでその場を離れ、家へ帰った男性。

玄関に入り、靴を脱ごうとしたときだった。

「カツン……」

背後から、あの音が聞こえた。

男性はゆっくり振り返った。

そこには誰もいない。

しかし、玄関のたたきには――

濡れた足跡が、ひとつだけ残っていた。

しかもその足跡は、玄関から外へ向かっているのではない。

家の中へ向かっていた。

それ以来、男性は夜になると、どこからともなく聞こえてくる足音に悩まされるようになったという。

「カツン……カツン……」

その音は、少しずつ近づいている。

そして今でも、男性の家では――

誰もいない廊下から、深夜になると足音が聞こえるという。

カツン……カツン……。

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