山口・21世紀の森――森の中で聞こえた自分の声

夜の21世紀の森を訪れた、ある男性の体験だ。

その男性は深夜、友人と二人で森の中を歩いていた。

昼間なら自然に囲まれた静かな場所だが、夜になると木々に囲まれ、懐中電灯の届かない場所は完全な闇になる。

しばらく歩いていると、友人が突然立ち止まった。

「……今、誰か喋った?」

男性には何も聞こえなかった。

「気のせいじゃない?」

そう言って歩き出した直後だった。

森の奥から、かすかな声が聞こえた。

「……こっち……」

二人は顔を見合わせた。

今度は男性にも聞こえた。

女性とも男性ともつかない、小さな声。

「こっち……」

しかし、声のした方向には誰もいない。

気味が悪くなり、二人は引き返すことにした。

その途中、友人がスマートフォンを取り出した。

「せっかくだし、森の写真撮って帰ろう」

何枚か撮影したあと、二人は車へ戻った。

そして車内で写真を確認していた時だった。

友人が一枚の写真を拡大した。

木々の間に、何かが写っている。

白い服のようなもの。

「……これ、人じゃない?」

二人は画面を見つめた。

確かに、人間のような形をしている。

だが、その人物は二人が歩いていた方向ではなく――

二人のすぐ後ろを見ているようだった。

「これ、撮った時に誰かいた?」

男性が聞く。

友人は首を横に振った。

「いや……誰もいなかった」

その瞬間。

車の後部座席から、

「こっち……」

と声がした。

二人は凍りついた。

後部座席には誰もいない。

慌てて車から飛び出し、外から車内を確認する。

当然、誰もいない。

「……今の、聞いたよな?」

友人が震えながら言った。

男性は答えられなかった。

そして、ふとスマートフォンを見る。

さっき撮った写真が、一枚増えていた。

二人が撮影した覚えのない写真だった。

そこには、暗い森が写っている。

そして写真の中央に――

二人の車が写っていた。

不自然なのは、その撮影位置だった。

写真は、

車のすぐ後ろから撮影されていた。

さらに拡大すると、車の後部座席の窓に、白い顔のようなものが映っている。

男性は慌てて写真を閉じた。

その時だった。

助手席に座っていた友人が、小さな声で言った。

「……なあ」

「何?」

友人は前を見たまま動かない。

「今、後ろの窓……」

男性が振り返る。

何もいない。

すると友人が震える声で続けた。

「……今度は、外じゃない」

「え?」

「後ろの席に……誰か座ってる。」

二人は同時に車を飛び出した。

その後、二度と夜の森には近づかなかったという。

しかし男性は今でも、あの時撮影した写真を削除できずにいる。

なぜなら――

あの写真を撮影した覚えがないはずなのに、写真の撮影日時だけは、

二人が車を降りた後の時刻になっている。

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