手形山公園――夜の階段
秋田市の手形山公園には、夜になると人の気配がなくなる場所がある。
昼間なら、木々の間から街の明かりが見え、散歩をする人の姿もある。
だが、夜になると様子が変わる。
ある冬の夜、二人の若者が肝試しのつもりで公園を訪れた。
「ここ、思ったより暗いな」
懐中電灯を頼りに、二人は山道を歩いていた。
しばらくすると、前方に古い階段が現れた。
その階段を上った先には、何もないはずだった。
ところが――
「……今、誰かいた?」
友人が立ち止まった。
階段の上に、白い服を着た女が立っていた。
遠くて顔は見えない。
「すみません!」
声をかけても、女は動かない。
二人が懐中電灯を向けた瞬間だった。
――スッ。
女の姿が消えた。
「……帰ろう」
二人は急いで階段を下り始めた。
しかし、何段下りても階段が終わらない。
十段、二十段、三十段。
それでも同じような階段が続いている。
そして突然、背後から声がした。
「……まだ帰らないの?」
二人は振り返った。
そこには、さっき消えた女が立っていた。
今度は、はっきり顔が見えた。
女は笑っていた。
だが、その目は真っ黒だった。
二人は夢中で走った。
気がつくと、公園の入口に戻っていた。
車に飛び乗り、何も言わずにその場を離れた。
翌朝。
撮影していたスマートフォンを確認すると、奇妙なことに気づいた。
階段を歩いている動画の最後。
二人の後ろに、白い服の女が映っていた。
そして、その女は二人を追いかけているのではなかった。
カメラに向かって、こう呟いていた。
「次は……ひとりで来てね」
その動画は、すぐに削除された。
しかし――
撮影した本人のスマートフォンには、その後も毎晩同じ時刻に通知が届いた。
送り主の名前は表示されない。
ただ、メッセージだけが届く。
「階段、まだ途中だよ」
そして最後の日。
画面には、こう表示された。
「今夜は、帰れないよ」
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