大洞光輪公園墓地――夜の墓地で聞こえた異国の声

岐阜県にある大洞光輪公園墓地。
広い敷地には多くの墓が並び、その一角には、かつてこの地で暮らした外国人の墓が残されているという。

これは、ある男性が友人と二人で、夜の墓地を訪れたときの話だ。

二人が到着したのは、午後11時を過ぎた頃だった。

昼間なら静かな公園墓地も、夜になると雰囲気が一変する。
街灯の少ない道を車で進んでいると、ヘッドライトの先に墓石が次々と浮かび上がった。

「思ったより暗いな」

友人がそう言った。

二人は車を降り、懐中電灯を手に墓地の中へ入っていった。

しばらく歩いていると、遠くから何か聞こえてきた。

「……誰かいる?」

耳を澄ます。

すると、墓石の並ぶ暗闇の向こうから、低い声が聞こえてきた。

日本語ではない。

誰かが小さな声で、何かを話しているようだった。

二人は顔を見合わせた。

「外国人……?」

声は一人ではなかった。

男とも女とも分からない声が、いくつも重なって聞こえてくる。

しかし、周囲を懐中電灯で照らしても、人影はどこにもない。

そのときだった。

突然、友人が立ち止まった。

「……今、後ろにいたよな?」

振り返る。

そこには墓石しかなかった。

「何が?」

そう聞くと、友人は青ざめた顔で答えた。

「白い服の人。俺たちの後ろを歩いてた」

二人は急いで車へ戻ることにした。

ところが、来た道を戻っている途中、再び声が聞こえた。

今度は、すぐ耳元だった。

「……帰らないで」

二人は一瞬、動けなくなった。

そして懐中電灯を声のした方向へ向ける。

そこには、一基の古い墓があった。

墓石の前には誰もいない。

しかし、その墓の周囲だけ、異様なほど空気が冷たかった。

二人は何も言わず、その場を離れた。

車に乗り込み、エンジンをかける。

そして墓地から出ようとした瞬間、友人が突然、後部座席を見た。

「……いる」

「え?」

「後ろに、誰か座ってる」

恐る恐るバックミラーを見る。

そこには誰もいない。

だが、車を走らせ始めると、後部座席から――

コン、コン、コン……

と、窓を内側から叩くような音が聞こえ始めた。

二人は振り返らなかった。

そのまま墓地を離れたという。

翌朝、車を確認すると、後部座席の窓にだけ、内側から触れたような白い手形が残っていた。

そして二人は、それ以来、夜の大洞光輪公園墓地には二度と近づいていないという。

墓地に眠るのは、日本人だけとは限らない。

だからこそ、夜の静けさの中で聞こえる「知らない言葉」には、決して耳を傾けないほうがいいのかもしれない。

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