水戸城跡――夜の城跡を歩く影
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夜の水戸城跡を歩いていた。
昼間は学校や道路があり、人の気配も多い場所だが、日が落ちると空気が一変する。
城跡へ続く道を進んでいると、後ろから――
「……カツ、カツ」
乾いた足音が聞こえた。
振り返る。
誰もいない。
気のせいだと思い、そのまま歩き続けた。
すると今度は、足音が自分の歩く速度に合わせてくる。
「カツ、カツ、カツ……」
立ち止まる。
足音も止まった。
少し怖くなり、早足でその場を離れようとした。
その瞬間だった。
すぐ耳元で、
「……待て」
低い男の声がした。
驚いて振り返る。
そこには誰もいない。
ただ、暗い城跡の道の先に、ぼんやりと人影が立っていた。
黒い服を着た男のように見える。
こちらをじっと見ている。
「誰ですか?」
声をかけても返事はない。
男はゆっくりとこちらへ歩いてくる。
一歩。
また一歩。
しかし、近づいてくるほど、その姿がおかしいことに気づいた。
足音がしない。
そして――足が地面についていなかった。
恐ろしくなって走り出した。
後ろを見ることはできなかった。
ただ、背後からずっと、
「カツ……カツ……」
という足音だけが追いかけてくる。
ようやく明るい場所まで逃げたところで、スマートフォンを見る。
時刻は午後11時。
そして、撮影していた動画を確認すると、奇妙なものが映っていた。
自分の背後、数メートルのところに――
黒い人影が立っていた。
しかも、その影の顔だけが、こちらを向いていた。
動画を消そうとした、その瞬間。
スマートフォンから、聞き覚えのない声が流れた。
「……次は、逃げるな」
それ以来、夜になると、部屋の廊下から時々聞こえるという。
「カツ……カツ……」
まるで、あの城跡から誰かが帰ってきたかのように。
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