鶴舞公園――夜の噴水に立つ女

名古屋市にある鶴舞公園。

昼間は多くの人が訪れる、緑の多い穏やかな公園だ。

これは、ある大学生が体験したという話だ。

その日、大学生の男性は友人と食事をしたあと、一人で鶴舞公園を通って帰宅していた。

時刻は、夜の十一時を過ぎていた。

公園の中は昼間とは違い、人の姿はほとんどない。

街灯の明かりも場所によっては弱く、木々の間には濃い闇が広がっていた。

男性が噴水塔の近くまで来たときだった。

少し離れた場所に、一人の女が立っているのが見えた。

白っぽい服を着て、噴水のほうをじっと見つめている。

こんな時間に、何をしているのだろう。

そう思ったものの、男性は気にせず通り過ぎようとした。

その瞬間だった。

女が、ゆっくりと振り返った。

顔は見えない。

長い髪が顔全体を覆っていた。

男性は妙な違和感を覚えた。

そして、その女の足元を見た。

地面に影がない。

街灯のすぐ下に立っているにもかかわらず、女だけには影が落ちていなかった。

怖くなった男性は、振り返らずに歩き続けた。

すると後ろから、

「ねえ……」

小さな声が聞こえた。

男性は無視した。

しかし、

「ねえ……待って」

今度は、すぐ後ろから聞こえた。

それでも振り返らなかった。

やがて公園の出口が見えてきた。

もう少しで外に出られる。

そう思った瞬間、スマートフォンが鳴った。

画面を見ると、友人から電話がかかってきていた。

男性が電話に出る。

「もしもし?」

すると友人は、突然こう言った。

「お前、今どこにいる?」

「鶴舞公園だけど」

「……今、誰と歩いてる?」

男性は黙った。

友人は続けた。

「さっき電話したとき、お前の後ろから女の声が聞こえたんだけど」

その言葉を聞いた瞬間。

男性の背後から、

「どうして振り返ってくれないの?」

女の声がした。

男性は、そのまま走って公園を出た。

それ以来、夜の鶴舞公園には一人で近づかなくなったという。

そして後日、友人に録音された通話を聞かせてもらった。

そこには確かに、男性の声とは別に、女の声が入っていた。

ただ、不思議なことに――

その声は、男性が電話に出る前から録音されていた。

「ねえ……」

そして最後には、

「こっちを見て」

という声が、はっきり残っていたという。

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