一本松公園――夜景の向こう側
静岡市の山あいにある一本松公園。
昼間は、静岡市街や駿河湾まで見渡せる、静かな公園として知られている。
しかし、夜になると雰囲気が変わる。
これは、ある男性が友人から聞いた話だ。
数年前の夏、その男性は友人二人と一本松公園を訪れた。
目的は、山頂から見える夜景だった。
車を降りると、周囲には街灯がほとんどなく、聞こえるのは木々が風に揺れる音だけ。
三人は懐中電灯を頼りに歩き始めた。
しばらくすると、木々の隙間から街の明かりが見えてきた。
「ここ、思ったより綺麗だな」
そう言って、一人がスマートフォンを取り出した。
その瞬間だった。
カメラの画面に、妙なものが映り込んだ。
三人の少し後ろ。
暗い木々の間に、白っぽい人影が立っていた。
「……誰かいる?」
振り返った。
だが、そこには誰もいない。
友人がふざけて隠れているのだと思い、三人で周囲を探した。
しかし、人影どころか、人が歩いたような跡すらなかった。
「気のせいだろ」
そう言って、再び夜景を見ることにした。
ところが、その直後。
スマートフォンから、突然、
「カシャッ」
というシャッター音がした。
誰も撮影していない。
画面を見ると、カメラロールに一枚の写真が増えていた。
そこに写っていたのは、夜景だった。
だが、三人が立っている場所を少し離れたところから撮影したような、不自然な写真だった。
そして写真の中央。
木の陰に、先ほどの白い人影が立っていた。
三人は凍りついた。
さらに恐ろしかったのは、その人影の向きだった。
こちらを見ているのではない。
山の斜面に向かって、背を向けて立っていた。
「消そう」
そう言って写真を削除した。
しかし、数秒後。
また同じ写真が現れた。
何度削除しても消えない。
やがて三人は、何も言わずに山を下りることにした。
その途中、一人がふと後ろを振り返った。
木々の向こうに、白い人影が立っていた。
今度は、こちらを向いていた。
そして――
その顔だけが、異様なほど近くに見えた。
慌てて目をそらし、三人は無言で車まで走った。
翌朝、スマートフォンを確認すると、あの写真は消えていた。
ただし、一枚だけ残っていた。
それは、三人が車に乗り込む直前に自動撮影された写真だった。
車の後部座席。
誰も乗っていないはずの場所に、
白い顔のようなものが写っていた。
それ以来、三人は夜の一本松公園には二度と行っていないという。
そして、その写真を撮った男性は今でも、
「夜景を見るときは、景色だけを見ないほうがいい」
そう話しているという。
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