横浜外国人墓地――夜の墓地で聞こえた足音

横浜の山手にある外国人墓地。

異国情緒のある街並みの中に、古い墓石が静かに並んでいる。

昼間は観光客の姿も多く、落ち着いた場所に見える。

だが、夜になると雰囲気は一変するという。

これは、ある男性が友人と横浜を訪れたときの話だ。

その日は夜まで山手周辺を歩き回り、帰る前に外国人墓地の近くを通った。

時刻は、夜の11時を過ぎていた。

「もう誰もいないな」

そう言って、男性は墓地の外側に続く道を歩いていた。

そのときだった。

――コツ。

後ろから、靴音が聞こえた。

振り返る。

しかし、誰もいない。

友人に聞いても、

「何も聞こえないけど?」

と言う。

気のせいだと思い、再び歩き始めた。

すると、

――コツ、コツ、コツ。

今度は、はっきり聞こえた。

しかも足音は、二人の後ろから一定の距離を保ったままついてくる。

男性が立ち止まる。

すると足音も止まった。

歩き出す。

足音も再びついてくる。

「……誰かいるんじゃないか?」

そう思った男性は、意を決して振り返った。

やはり、誰もいない。

街灯に照らされた道。

古い墓石。

そして、静まり返った墓地。

それだけだった。

ところが、その直後。

友人が小さな声で言った。

「今……墓の中から、音しなかった?」

男性は耳を澄ませた。

――カツン。

墓石の向こうから、何かを叩くような音が聞こえた。

二人は顔を見合わせた。

もう一度、

――カツン。

今度ははっきり聞こえた。

まるで、誰かが墓石の内側から叩いているようだった。

二人は急いでその場を離れた。

そして、坂を下り始めたときだった。

男性がふと振り返る。

墓地の奥。

暗闇の中に、白い服を着た人影が立っていた。

距離はかなり離れている。

顔までは見えない。

ただ、その人影は二人のいる方向をじっと見つめていた。

男性がもう一度瞬きをすると、人影は消えていた。

その夜以来、男性は外国人墓地の近くを夜に通ることを避けるようになったという。

そして今でも不思議に思っている。

あの夜、二人の後ろを歩いていた足音は、一体誰のものだったのか。

そして最後に墓地の奥に立っていた、あの白い人影は――。

静かな墓地だからこそ、聞こえてしまうものがある。

見えてしまうものがある。

横浜外国人墓地には、今も多くの人々が眠っている。

だからこそ、夜に訪れるときは、決して軽い気持ちで墓地の奥へ近づかないほうがいいのかもしれない。

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