市民プラザ――閉館後のエレベーター
富山の街中にある市民プラザ。
昼間は多くの人が訪れ、イベントや買い物などで賑わっている、どこにでもあるような施設だった。
しかし、そこで働いていたある男性には、どうしても近づきたくない場所があった。
それは、閉館後のエレベーターだった。
ある夜、男性が館内の見回りをしていると、誰もいないはずの上階からエレベーターが降りてきた。
「誰か残っているのか?」
そう思い、扉が開くのを待った。
チン――。
扉が開く。
中には誰もいない。
男性は少し不思議に思いながらも、そのままエレベーターに乗り込んだ。
そして一階のボタンを押した。
ところが、扉が閉まる直前だった。
「……すみません」
背後から、小さな女の声が聞こえた。
男性は驚いて振り返った。
もちろん、誰もいない。
「気のせいか……」
そう呟いた瞬間、エレベーターの扉が再び開いた。
誰も操作していないのに、途中の階で止まったのだ。
そして、開いた扉の向こうには薄暗い廊下が見えていた。
男性が何気なく外を見る。
すると廊下の奥に、白い服を着た女性が立っていた。
顔は見えない。
ただ、こちらを見ているようだった。
「……どなたですか?」
声をかけた。
女性は答えない。
そのまま、ゆっくりとこちらへ歩き始めた。
一歩。
また一歩。
しかし、足音がしない。
男性は慌てて閉ボタンを押した。
扉が閉まり始める。
その隙間から見えた女性の顔。
長い髪の隙間から覗いていたのは――
真っ黒な目だった。
扉が完全に閉まった瞬間、耳元で再び声がした。
「……一緒に降りてもいいですか?」
男性は振り返らなかった。
エレベーターが一階に到着するまで、目を閉じたまま耐えたという。
そして扉が開く。
恐る恐る目を開けると、そこには誰もいなかった。
ただ、エレベーターの鏡には、自分の後ろに立つ女性の姿だけが映っていた。
男性が振り返る。
やはり、誰もいない。
もう一度鏡を見る。
女性の姿も消えていた。
それ以来、男性は閉館後のエレベーターに一人では乗らなくなった。
そして今でも、夜の館内でエレベーターが誰もいない階から呼び出されることがあるという。
扉が開いたとき――
そこに誰もいなかったとしても。
「乗っているもの」まで、いないとは限らない。
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