青葉の森公園――森の奥から聞こえる声
千葉県にある青葉の森公園。
昼間は多くの人が訪れ、散歩やジョギングを楽しむ、ごく普通の公園だ。
しかし、夜になると人の姿はほとんどなくなり、広い園内は不気味なほど静かになる。
これは、そんな青葉の森公園で起きたという、ある男性の体験談をもとにした創作の話だ。
その男性が公園を訪れたのは、夜の十一時を過ぎた頃だった。
近くを車で通った際、少し休もうと思い、園内の道路脇に車を停めた。
外に出ると、昼間とはまるで違う空気だった。
木々の間から聞こえるのは、風で葉が擦れる音だけ。
男性はスマートフォンの明かりを頼りに、少しだけ歩いてみることにした。
しばらくすると、森の奥から、
「……すみません」
という小さな声が聞こえた。
男性は足を止めた。
誰かがいる。
そう思って声のした方向を見る。
しかし、そこには木々が並んでいるだけだった。
「誰かいますか?」
そう声をかけると、
「……こっちです」
今度は、はっきり聞こえた。
声は森の奥からだった。
男性は少し迷ったが、困っている人かもしれないと思い、声の方向へ歩いていった。
ところが、歩いても歩いても人影は見つからない。
それどころか、声は少しずつ遠ざかっていく。
そして突然、
「もう少し……こっち」
耳元で囁かれた。
男性は驚いて振り返った。
誰もいない。
だが、その瞬間だった。
背後の暗い木々の間に、
白い服を着た人影が立っているのが見えた。
女性のようだった。
顔は下を向いていて、表情までは分からない。
男性がスマートフォンを向けた瞬間、その姿は木の陰へ消えた。
怖くなった男性は、急いで来た道を戻った。
ところが、なぜか道が見つからない。
同じような木々が続き、どちらへ進んでも公園の出口に出られない。
そのとき、また声がした。
「……どうして帰るの?」
男性は走った。
背後から、
「待って……」
「ねえ……」
と、女性の声が何度も聞こえてくる。
しかし振り返らなかった。
しばらく走り続けると、ようやく街灯の明かりが見えた。
そこまで来て、男性は初めて後ろを振り返った。
誰もいない。
ただ、遠く離れた森の中に、一人だけ立っている人影が見えた。
そして、その人影はゆっくりと手を上げた。
まるで、
「また来てね」
とでも言うように。
男性はそのまま車へ戻り、公園を後にした。
それ以来、夜の青葉の森公園には二度と近づかなかったという。
ただ、一つだけ奇妙なことがあった。
翌朝、スマートフォンを確認すると、昨夜撮った覚えのない写真が一枚保存されていた。
そこには真っ暗な森が写っていた。
そして画面の中央。
木々の隙間から、
白い顔だけがこちらを見つめていた。
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