常山城跡の怖い話「十三人の女」
岡山県にある常山城跡。
山頂へ続く細い道を歩いていると、昼間でもどこか重苦しい空気を感じる場所がある。
この城には、戦国時代にまつわる悲しい伝説が残されている。
天正三年――。
常山城が落城した際、城主の妻と侍女たちが命を落としたと伝えられている。
その中でも特に有名なのが、**「鶴姫」**の伝説だった。
ある夏の夜、一人の男性が常山城跡を訪れた。
時刻は午前二時を過ぎていた。
懐中電灯を頼りに山道を進んでいると、突然――
「……カーン」
遠くから、金属を叩くような音が聞こえた。
男性は足を止めた。
「こんな時間に誰かいるのか?」
そう思った瞬間、今度は背後から、
「……女の声」
が聞こえた。
振り返る。
誰もいない。
だが、懐中電灯を前に向け直したとき、山道の先に白い着物を着た女が立っていた。
長い髪で顔は見えない。
男性が声をかけようとすると、女はゆっくり振り返った。
そして、小さな声で言った。
「……まだ、帰れません」
男性は恐ろしくなり、急いでその場を離れようとした。
しかし――。
走っても走っても、なぜか同じ場所に戻ってくる。
そして気がついた。
道の脇に、先ほど見た女が立っている。
一人。
二人。
三人。
気づけば、十三人の女が道の両側に並んでいた。
全員、うつむいている。
男性が震えながら通り過ぎようとすると、一番奥にいた女が顔を上げた。
その顔を見た瞬間、男性は声を失った。
顔は――
真っ白だった。
そして十三人の女が、同時に男性を見つめる。
「殿は……まだ戻られませんか?」
その瞬間、山全体に女たちの泣き声が響き渡った。
男性が気を失い、翌朝になって目を覚ますと、そこは山道だった。
慌てて下山した男性は、二度と常山城跡へ行かなかったという。
ただ、その後も奇妙なことが続いた。
男性が撮影していた写真を確認すると、暗闇の山道に、十三人の白い人影が写っていた。
そして写真の端には――
誰もいなかったはずの場所に、もう一人。
甲冑を着た男が立っていた。
まるで、十三人の女たちを迎えに来たかのように。
それ以来、地元では夜の常山城跡で、
「女たちの泣き声を聞いても、決して振り返ってはいけない」
と言われるようになった。
なぜなら、振り返った者の後ろには――
十三人目ではない、“十四人目”が立っている
というのだから。
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