新潟競馬場――最終レースのあと

その話を聞いたのは、競馬好きの知人からだった。

新潟競馬場では、昼間は大勢の人で賑わっている。

歓声が響き、馬が駆け抜け、レースが終われば人々はそれぞれ帰っていく。

しかし、夜になると、その周辺の雰囲気は一変する。

街灯の少ない道を車で走っていると、さっきまで聞こえていた人の声が嘘のように消える。

ある男が、深夜に競馬場の近くを車で走っていた。

その日は友人と競馬を楽しみ、帰りが遅くなった。

時計を見ると、午前0時を少し過ぎている。

「こんな時間までいたのか……」

そう呟きながら、車を走らせていると、道路脇に一人の男性が立っているのが見えた。

黒っぽい服装。

俯いたまま、じっと道路を見つめている。

こんな時間に何をしているのだろう。

男はそう思ったが、そのまま通り過ぎた。

ところが――

バックミラーを見ると、男の姿がない。

「……?」

ほんの数秒しか経っていない。

走っている車から見えなくなるような距離でもなかった。

気味が悪くなり、そのまま帰宅した。

翌朝。

昨夜のことを友人に話すと、友人はしばらく黙った。

そして、

「それ……競馬場の近くで見たの?」

そう尋ねた。

「うん」

すると友人は、小さな声でこう言った。

「夜に、あそこを走ると……たまに人影を見るって話、聞いたことある」

もちろん、それが何者なのかは分からない。

ただ、不思議なのはその後だった。

男は自分の車を確認していて、後部座席の窓に奇妙なものを見つけた。

内側から、指でなぞったような跡が残っていた。

一本。

二本。

そして――

五本。

まるで誰かが、後部座席から外を眺めながら、窓に手をついていたような跡だった。

男は、その日以来、夜の新潟競馬場周辺を走らなくなったという。

そして地元では、こんな話が囁かれている。

「最終レースが終わったあとも、帰らない何かがいる」

それが誰なのか。

そして、何を待っているのか。

今となっては、誰にも分からない。

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