旧奈良市水道計量器室――夜になると聞こえる水の音

奈良の街を歩いていると、古い建物や歴史を感じさせる場所に出会うことがあります。

その中でも、ひっそりと残る「旧奈良市水道計量器室」。

昼間に見ると、古い建物が残っているだけに見えます。

しかし、この場所には、夜になると奇妙な音を聞いたという話があります。

ある日の夜、奈良の古い建物を撮影していた二人の若者が、旧奈良市水道計量器室の近くまでやってきました。

時刻は午後11時を過ぎていました。

周囲には人の姿もなく、聞こえてくるのは風で木々が揺れる音だけ。

「ここ、思ったより静かだな」

そう言いながら、二人は建物の写真を撮り始めました。

その時でした。

――ポタッ。

どこからか、水が落ちるような音が聞こえました。

二人は顔を見合わせました。

「今、水の音しなかった?」

「した。建物の中じゃない?」

しかし、周囲を見ても水道管から水が漏れている様子はありません。

気のせいだと思い、撮影を続けます。

すると今度は、

――ポタッ……ポタッ……。

先ほどよりはっきりと、水滴が落ちる音が聞こえてきました。

しかも、その音は少しずつ二人のいる場所へ近づいているように感じられました。

「……誰かいる?」

一人が建物のほうへライトを向けました。

何もありません。

ところが、ライトを消した瞬間――

――ジャーッ。

今度は、大量の水が流れるような音が聞こえました。

二人は驚いて、その場から離れようとしました。

すると、一人が突然立ち止まりました。

「待って……」

「どうした?」

彼は建物の入口を指差しました。

そこには、さっきまで何もなかったはずなのに、薄暗い床の上に細長い水滴の跡が続いていたのです。

まるで、濡れた誰かが建物の奥から歩いてきたように。

水滴の跡は、二人の足元まで伸びていました。

そして、その先には――

濡れた足跡が一つだけ残っていました。

二人は慌ててその場を離れました。

翌日、撮影した写真を確認すると、奇妙なことに気づきました。

建物を撮影した写真の一枚。

そこには誰も写っていないはずでした。

しかし、建物の暗い窓の奥に、ぼんやりと白い影が立っていたのです。

そして、その影の足元には――

水たまりのような黒い跡が写っていました。

もちろん、これが何だったのかは分かりません。

古い水道施設だったことを考えれば、水にまつわる現象だったのかもしれません。

しかし、もし夜にこの場所を訪れることがあったとしても、建物には不用意に近づかないほうがいいでしょう。

静まり返った夜の奈良で、

――ポタッ。

もしそんな水滴の音が聞こえてきたら。

その音が、本当に水の音なのか。

一度、立ち止まって確かめてみてください。

もしかすると、その音は――

あなたのすぐ後ろから聞こえているかもしれません。

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