白川公園――夜のベンチに座る女

名古屋市の中心部にある白川公園。

昼間は、名古屋市科学館や美術館もあり、多くの人が行き交う場所だ。

しかし、夜になると広い園内は一気に静かになる。

これは、ある男性が体験したという話だ。

仕事帰り、男性は終電まで少し時間があったため、白川公園のベンチに座ってスマートフォンを見ていた。

時刻は、午後11時を過ぎていた。

周囲には誰もいない。

車の音は聞こえているものの、公園の中だけは妙に静かだった。

しばらくすると、少し離れた場所に一人の女が立っていることに気づいた。

白い服を着て、こちらをじっと見ている。

「こんな時間に……?」

男性はそう思ったが、気にせずスマートフォンに目を戻した。

ところが、数分後。

顔を上げると、女がいない。

帰ったのだろうと思い、男性も立ち上がった。

そのときだった。

背後から、

「……すみません」

小さな女の声がした。

振り返る。

誰もいない。

気のせいだと思って歩き出した。

すると、また後ろから、

「……ここ、座ってもいいですか?」

今度は、はっきり聞こえた。

男性が振り返ると、先ほどの女が立っていた。

しかも、さっきよりずっと近い。

男性は恐ろしくなり、何も答えずその場を離れた。

公園の出口へ向かって歩いていると、女の声がまた聞こえた。

「どうして……置いていくんですか」

男性は振り返らなかった。

そのまま公園を出て、駅へ向かった。

そして翌日。

昨夜座っていたベンチのことが気になり、昼間にもう一度白川公園を訪れた。

ベンチは、何事もなかったようにそこにあった。

男性は安心して、その場所をスマートフォンで撮影した。

しかし、その写真を見た瞬間、背筋が凍った。

ベンチには誰も座っていない。

それなのに――

ベンチの隣に、白い服を着た女が写っていた。

しかも女は、カメラではなく、

昨夜、男性が座っていた場所をじっと見つめていた。

それ以来、男性は夜の白川公園には近づかなくなったという。

そして今でも、あのベンチには誰もいないのに、

「誰かが座っているように見える」

という話が、ひそかに語られている。

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