済生会新潟第二病院・7階――誰もいない廊下

深夜の病院は、昼間とはまったく違う顔を見せる。

昼間なら多くの人が行き交う廊下も、夜になれば足音ひとつ聞こえない。

その夜、私は仕事で病院を訪れていた。

用事を終え、エレベーターに乗った。

行き先は9階。

ところが、エレベーターが上昇している途中、突然、

「ガタン……」

と大きく揺れた。

そして、表示が7階で止まった。

扉が開く。

そこには、薄暗い廊下が伸びていた。

誰もいない。

私は「閉」を押そうとした。

その瞬間だった。

廊下の奥から、

「……カツ……カツ……」

と、誰かの足音が聞こえた。

ゆっくり。

こちらへ近づいてくる。

病院の夜勤スタッフだろうと思った。

しかし、足音は途中で止まった。

エレベーターから十数メートルほど離れた場所。

暗い廊下の向こうに、何かが立っているように見えた。

人影だった。

じっとこちらを見ている。

私は反射的に目をそらし、エレベーターの「閉」ボタンを押した。

ところが扉は閉まらない。

何度押しても反応しない。

すると今度は、

「カツ……カツ……」

また足音がした。

さっきより近い。

私は怖くなり、廊下の奥を見た。

人影は、もうそこにはいなかった。

その代わり――

エレベーターのすぐ横に立っていた。

白い服を着た、うつむいた人。

顔は見えない。

ただ、こちらに向かって小さな声で、

「……まだ、いるよ」

そう言った。

その瞬間、エレベーターの扉が閉まった。

私は何も考えず、9階のボタンを押した。

エレベーターが動き出す。

ようやく安心した。

しかし、数秒後。

「……カツ」

エレベーターの中から、足音が聞こえた。

私はゆっくり振り返った。

誰もいない。

それでも、

「カツ……カツ……」

足音だけが、背後から近づいてくる。

そして9階に到着した瞬間。

耳元で、

「次は……7階ね」

と、女の声がした。

扉が開いた。

私は振り返らず、そのまま走って逃げた。

後日、その話を知っている人に聞いた。

「7階って、夜になると誰かいるんですか?」

すると、その人は少し黙ってから、

「……7階では、たまにエレベーターが勝手に止まるって話、聞いたことありますよ」

そう答えた。

そして最後に、こう付け加えた。

「でもね……」

「7階で扉が開いても、絶対に廊下を見ないほうがいい」

「見てしまうと――」

「向こうも、こっちを見てしまうから」

その言葉を聞いてから、私は病院のエレベーターに乗るたび、7階の表示を見ないようにしている。

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