道満グリーンパーク――『土手の向こうから』
夏の夜、友人と二人で道満グリーンパークへ行った。
昼間なら、家族連れやバーベキューを楽しむ人で賑わう場所だ。
しかし、日付が変わる頃になると、人の気配はほとんどなくなる。
その夜、俺たちは土手に車を停め、彩湖を眺めながら話をしていた。
午前一時を過ぎた頃だった。
突然、
「……ザッ……ザッ……」
土手の下から、誰かが歩いてくるような音が聞こえた。
「誰かいるんじゃない?」
友人がそう言った。
俺も目を凝らした。
暗闇の中に、人影がある。
こちらへ向かって歩いているようだった。
だが、おかしい。
街灯に照らされているのに、顔が見えない。
そして、その人影は俺たちのいる場所まで来ることなく、途中で立ち止まった。
「……おい」
友人が小声で言った。
その瞬間だった。
背後から、
「……帰れ」
男の声がした。
俺たちは同時に振り返った。
誰もいない。
ただ、草むらが風で揺れているだけだった。
「今、聞こえたよな?」
友人が震えた声で言った。
俺は返事をしなかった。
なぜなら、さっきまで遠くにいた人影が、いつの間にか消えていたからだ。
急いで車へ戻ろうとした。
そのとき――
背後から、また足音が聞こえた。
「ザッ……ザッ……ザッ……」
今度は明らかに近い。
俺たちは振り返らず、走った。
車に乗り込み、エンジンをかける。
そしてライトを点けた。
その瞬間、フロントガラスの向こうに――
男が立っていた。
顔は真っ暗で見えない。
ただ、こちらを見ている。
俺が慌てて車を発進させると、男の姿は一瞬で消えた。
翌朝。
怖さを紛らわせるため、昨夜撮った写真を確認してみた。
何枚か撮った中に、土手を写した写真が一枚あった。
そこには何も写っていない。
……そう思った。
拡大するまでは。
写真の端。
暗い土手の上に、白い顔の男が立っていた。
そして、その男の口元だけが――
「帰れ」
と言っているように、大きく開いていた。
さらに恐ろしかったのは、その写真の撮影時刻だった。
俺たちが車へ逃げ込む、
三分前。
つまり――
写真を撮ったとき、俺たちはまだその男を見ていなかった。
男のほうが先に、
俺たちを見ていたのだ。
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