お城広場――夜の遊具から聞こえる声

新潟市の海岸沿いに広がる西海岸公園。

昼間は子どもたちの声が響き、散歩をする人や海を眺める人も多い、ごく普通の公園だ。

その一角に、お城の形をした大きな遊具がある。

「お城広場」。

しかし、この場所には昔から、少し変わった噂があった。

夜になると、誰もいないはずのお城の遊具から、子どものような声が聞こえる。

そして、その声を聞いても、決して返事をしてはいけない――。

ある夏の夜。

一人の若者が、肝試しのつもりでお城広場を訪れた。

時刻は午前一時を過ぎていた。

昼間とは違い、園内には人の姿がない。

海から吹く風が松林を揺らし、

「ザァ……ザァ……」

と、波の音に混じって不気味な音を立てている。

若者は懐中電灯を手に、お城の遊具へ近づいた。

そのときだった。

「……ねえ」

背後から、女の子の声がした。

若者は驚いて振り返った。

しかし、そこには誰もいない。

「……気のせいか」

そう呟き、再びお城を見る。

すると――。

さっきまで誰もいなかったはずの滑り台の上に、白い服を着た少女が座っていた。

少女は俯いたまま、動かない。

若者は声をかけようとした。

だが、その瞬間。

少女がゆっくり顔を上げた。

暗闇の中でも分かるほど、顔は青白かった。

そして、小さな声で言った。

「……一緒に遊ぼう?」

若者は恐怖で動けなくなった。

その直後、遊具の中から、

「カン……カン……」

と、誰かが階段を上ってくるような音が聞こえ始めた。

一段。

また一段。

誰もいないはずなのに、確かに足音が近づいてくる。

若者は逃げようとした。

しかし足が動かない。

すると少女が、今度は笑いながら言った。

「ひとりじゃないよ」

その瞬間――。

お城の遊具の窓という窓に、いくつもの白い顔が浮かび上がった。

子ども。

女性。

老人。

誰なのか分からない顔が、暗い窓の向こうからこちらを見つめている。

そして全員が、同じ言葉を呟いた。

「……帰らないで」

若者は夢中で走った。

松林を抜け、海岸沿いの道まで逃げたところで、ようやく振り返った。

お城広場は遠くに見えている。

当然、そこには誰もいない。

そう思った。

しかし――。

お城の頂上に、さっきの少女が立っていた。

そして、こちらを見ながら手を振っている。

若者は急いでその場を離れた。

翌朝。

もう一度、お城広場を訪れてみた。

遊具には何の異常もなかった。

ただ、一つだけ不思議なものがあった。

砂の上に、小さな裸足の足跡が残っていた。

それは遊具の階段から始まり、海とは反対方向へ続いていた。

そして足跡は、若者が昨夜立っていた場所で突然消えていた。

それ以来、若者は夜の公園には二度と近づかなかったという。

ただ、今でも夜遅くにお城広場の近くを通ると、

「……一緒に遊ぼう?」

という、小さな女の子の声が聞こえることがあるという。

もちろん、それが本当に聞こえたのか。

それとも、海風と松林の音を聞き間違えただけなのか。

誰にも分からない。

ただ一つだけ――。

夜のお城広場では、誰もいないはずの遊具から、子どもの笑い声が聞こえるという噂だけが、今も残っている。

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