武尊神社・呪いの廃神社

山深い場所に、今ではほとんど人が訪れなくなった古い神社がある。

そこは「武尊神社」と呼ばれていた。

かつては地元の人々が参拝していたというが、いつしか参道は草木に覆われ、社殿も荒れ果てていった。

そして、いつからかこんな噂が囁かれるようになった。

「あの神社では、夜に名前を呼ばれても、絶対に返事をしてはいけない」

ある夏の夜、三人の若者がその神社を訪れた。

懐中電灯を手に、暗い山道を進んでいく。

しばらくすると、木々の向こうに古びた鳥居が見えた。

「ここか……」

鳥居をくぐった瞬間だった。

――カン……。

遠くで、鈴を鳴らしたような音がした。

三人は顔を見合わせた。

しかし、そこには誰もいない。

さらに奥へ進むと、朽ちかけた社殿が現れた。

窓は割れ、壁には黒い染みが広がっている。

そのとき、一人が小さな声で言った。

「……今、誰か俺の名前呼ばなかった?」

二人は首を横に振った。

すると今度は、社殿の奥からはっきりと声が聞こえた。

「……おいで」

三人は恐ろしくなり、急いで引き返そうとした。

だが、来たはずの参道が見つからない。

同じ場所を何度歩いても、目の前には古い社殿が現れる。

そして――

背後から、もう一度声がした。

「名前を……呼んで……」

一人が振り返った。

そこには、誰もいなかった。

ただ、社殿の扉が先ほどまで閉まっていたはずなのに、ゆっくりと開いていた。

ギィィィ……。

暗闇の中から、白い手が一本だけ伸びていた。

三人は必死に走った。

すると突然、木々の間から鳥居が見えた。

「出口だ!」

夢中で鳥居をくぐり、山道を下った。

翌朝。

三人が撮影した映像を確認すると、奇妙なものが映っていた。

社殿の前で立ち止まった場面。

三人の背後に、もう一人、人影が立っていた。

しかも、その人影は三人が逃げ出した後も、ずっとカメラを見つめていた。

そして映像の最後。

誰も触れていないはずの録音データに、低い声が残っていた。

「……次は、ひとりで来て」

それ以来、三人は二度とその神社について話さなくなったという。

そして今でも、夜の山中から神社の方向へ耳を澄ますと――

誰もいないはずの場所から、時々、人の名前を呼ぶ声が聞こえるという。

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