新潟ホワイトハウス――窓の向こうの少女
海岸沿いを走る国道から、少し山側へ入った場所。
そこには、木々に囲まれるようにして、一軒の白い建物が立っていた。
地元では、その建物を「ホワイトハウス」と呼んでいた。
白かったはずの壁は長い年月でくすみ、窓には鉄格子が残されている。
そして、いつからかこんな噂が広まっていた。
――夜になると、二階の窓から少女が外を見ている。
ある夏の夜。
肝試しに訪れた若者たちは、建物を遠くから眺めていた。
「本当に誰かいるんじゃないか?」
そう言った瞬間だった。
二階の窓に、白い影が現れた。
「……女の子?」
全員が息を止めた。
影は、鉄格子の向こう側からこちらを見ている。
顔までは見えない。
ただ、こちらをじっと見つめていることだけは分かった。
一人が怖さをごまかすように手を振った。
すると――
影も、ゆっくり手を上げた。
「やばい。帰ろう」
誰かがそう呟いた。
その瞬間。
建物の中から、
コン……
コン……
コン……
と、窓を叩く音が聞こえた。
まるで、
「ここから出して」
そう訴えているようだった。
若者たちは一斉に車へ走った。
そしてエンジンをかけ、建物から離れようとした。
ところが、一人だけ後部座席から動かなかった。
「どうした?」
問いかけても返事がない。
その男は、青ざめた顔で窓の外を指差していた。
「……まだいる」
全員が振り返った。
遠ざかっていくホワイトハウス。
二階の窓には、確かに白い影が立っていた。
しかし――
さっきまでとは違っていた。
影は窓の内側ではなく、
窓の外側に立っていた。
そして、車を追いかけるように、
ゆっくりと首を動かしていた。
その夜から、後部座席にいた男の車では奇妙なことが起こるようになった。
夜になると、誰も乗っていない後部座席から、
コン……
コン……
と、窓を叩く音がする。
最初は気のせいだと思った。
しかし、ある雨の夜。
音がした直後、男はバックミラーを見た。
そこには――
濡れた髪を顔に張り付かせた少女が座っていた。
少女は何も言わない。
ただ、じっと男を見つめている。
そして小さな声で、
「……まだ、帰らないの?」
そう呟いた。
男は恐怖でアクセルを踏み込んだ。
次の瞬間、車内のすべての窓が、
ドンッ!
と一斉に叩かれた。
そしてバックミラーから少女の姿が消えた。
安心して前を向いた男は、
そこで気づいた。
フロントガラスに、指で書かれたような文字があった。
――「次は、あなたが見て」
男は車を止めることができなかった。
そして、それ以来――
ホワイトハウスの二階の窓を遠くから見ると、
鉄格子の向こう側に立つ少女が、
いつもこちらを見ているという。
まるで、
次に自分を見つけてくれる人を待っているかのように。
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