2016年11月2日水曜日
【恐怖体験】ある健康センターにて
178 : 本当にあった怖い名無し@\(^o^)/[] 投稿日:2015/05/02(土) 20:13:26.70 ID:yivFCqAz5 [1/4回]
「ある健康センターにて」
都心のビル街を起点に、東北地方のとある繁華街へと続く国道。
その黒いアスファルトの上を、大きさや色、あるいは形もまちまちに
並ぶ車両の列が、早くもなく遅くもないスピードで流れていく。
道の両脇には大型の量販店が立ち並び、
その各店舗には不必要なほどただっ広い駐車場が設けられている。
どこか荒涼としていて物寂しげな景色だが、見慣れると、
まるで一つ一つの店が、どこぞの由緒ある名家の屋敷のようにも見えてくる。それがとても滑稽だなと、この街に移り住み3年ほどたった今でも、
通り過ぎるたびに思う。
そんなどこにでもあるような北関東の郊外の街で、
ゴールデンウイークの初日をのんびり過ごしていた私を、
怖くさせてくれたお話。
181 : 本当にあった怖い名無し@\(^o^)/[] 投稿日:2015/05/02(土) 20:15:20.59 ID:yivFCqAz5 [2/4回]
街の輪郭の一つ一つをくっきりと映し出すように、
燦燦と照り付ける真昼の太陽。まるで夏の到来を告げるかのように、
少し湿り気を含んだ熱気を放ち続け、
やがて黒く涼しげな冷気に押し出されながら、ゆっくりと沈んでゆく。
国道から分岐した細い道を車で10分ほど行くと、
雑木林に囲まれた閑静な農村地帯へと行き当たる。
少し離れたところに標高500mほどの山々が並び、
国道沿いの市街地からは隔離されたような空気が辺り一帯を流れる。
そんな場所の一角に、およそ40m四方の大きさで、
コンクリート造りの古びた建物が所在している。建物の前には、
やはりただっ広い駐車場があり、その入り口には「○○健康センター」と、
大して凝ったデザインでもないような看板が掲げられている。
その建物は、飲食施設を備えた温浴施設で、県内ではそれなりに高い集客力を
持っており、また、一年ほど前に会社の上司の紹介で初めて来たときから、
私の行きつけの休憩所の一つとなっていた。「○○健康センター」は
平屋造りの一階建てで、周囲の景色から少しだけ浮いたような佇まいを
その身にまとい、しかし、それほど景観を害しているということもなく、
ひっそりとその姿を構えている。
182 : 本当にあった怖い名無し@\(^o^)/[] 投稿日:2015/05/02(土) 20:17:57.49 ID:yivFCqAz5 [3/4回]
ゴールデンウイークの初日、特に予定もなかった私は一人、
健康センターを何の気もなしに訪れていた。
サウナと温泉で疲れをいやした後、つまみを口にしながら生ビールを三倍ほど飲み干し、休憩室のリラックスチェアーでTVを眺めながら、
やがて眠りについていた。
多くの人がまだ寝静まっている翌朝の5時ごろ、
「…来てください…来てください」
か細い女性の声が不意に耳に響き、目を覚ました。声の主を探そうと、
上半身を起こし、周囲を見渡したが誰もいない。声は鳴りやみ、
私は気のせいかと思い、再び眠りについた。
しかしその一時間後、先ほどと同様の声が、
先ほどよりもはっきりと聞こえた。
「…起きてください…起きてください」
聞き直してみると「来てください」というのは聞き間違いだったらしく、
実は「起きてください」と言う呼びかけだったようだ。
健康センターの宿泊客は、朝8時までに料金を支払い、
退館手続きをしなければならない。これはおそらく、
それを呼びかけるための健康センター側からのアナウンスだろうと、
私は少し考えたが、退館時間である8時を考慮すると、
5時や6時では早すぎて、まだ呼びかけをするのに適切な時間とは言えない。
そもそも常識的に、来客者にサービスを提供するための施設が、
客に対し何の説明もなく「起きてください」
としか呼びかけないのは不自然だ。
いったいこの呼びかけは何なのだろう。
周囲を見ると、私以外の全員が、リラックスチェアーにもたれかかったまま、まだ眠りについている。
183 : 本当にあった怖い名無し@\(^o^)/[] 投稿日:2015/05/02(土) 20:18:52.17 ID:yivFCqAz5 [4/4回]
この声は、私にしか聞こえないのだろうか。
だとしたら、私にいったい何を訴えたいのだろうか。
考えれば考えるほど女性の声は不気味に聞こえ、
無機質な音のリピートが鼓膜の奥で拡大していく。
はっとと気づくと、休憩室の暗がりの中、声は消えていた。
私は首を傾げ、頭の中に大きな疑問を残したまま、
再び上半身をリラックスチェアーへと倒していた。
目を閉じ、体の力を抜いても眠れるわけもなく、
意識だけが妙に高ぶったまま、約1時間程度の時間が過ぎた。
そろそろ本当に、健康センター側から来客者への起床の呼びかけが
あってもおかしくはない。「あの声は幻聴だったのだろう。」
そんな風に自分を納得させ、退出の準備をしようと思った朝7時頃、
再び先ほどの声がした。
「起きてください…起きてください…起きてください…起きてください…起きてください…」
恐怖のあまり、思わず休憩室から逃げ出そうとしたちょうどその時!
となりのマッサージチェアに座っていた腹の出た50過ぎのおっさんが、
眠い目をこすりながら、腹にかけていた毛布の中から、
スマートフォンを取り出し、おもむろにボタンを押した。
「起きてください…起きてピッ…」
女性の声は止み、そして、二度と繰り返されることはなかった。
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