2016年5月19日木曜日

【恐怖体験】木立の隙間に人の姿

232 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[] 投稿日:03/02/10 11:42
先月のことです。Aと俺は山へ測量に入りました。

 山の測量に行く時は、最低3人で行くようにしていたんですけど
行くハズだった奴がインフルエンザで倒れて、他に手の空いてる人も居なかったんで
 しょうがなく2人で行くことになったわけです。
でもやっぱり不安だったんで、境界を案内してくれる地元のおっさんに
 ついでに測量も手伝ってくれるように頼みました。
おっさんは賃金くれればOKという事で、俺たちは3人で山に入りました。

 前日からの雪で山は真っ白でした。
でも、ポールがよく見えるので、測量は意外にサクサク進みました。

 午前中一杯かかって尾根の所まで測ったところで、おっさんの携帯が鳴りました。
おっさんはしばらく話をしていましたが、通話を終えると、急に用事ができたので下りると言い出したのです。

おいおいって思ったんですけど、あとは小径に沿って土地の境界やから、そこを測っていけばイイからって言われて
小径沿いだったら大丈夫かもな、まぁしゃーないか
 みたいなムードで、結局Aと俺の二人で続きをやることになりました。

ところがおっさんと別れてすぐ、急に空が曇ってきて天候が怪しくなってきました。
このまま雪になるとヤバイよな、なんて言いながら、Aと俺は早く済まそうと思ってペースを上げました。

233 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[] 投稿日:03/02/10 11:43 
ところで、俺らの会社では山の測量するのに 
 ポケットコンパスって呼ばれている器具を使っています。 
 方位磁石の上に小さな望遠鏡が付いていて、 
それを向けた方向の方位や高低角が判るようになっています。 
 軽くて丈夫で扱いが簡単なので、山の測量にはもってこいなんです。 

 俺はコンパスを水平に据え、ポールを持って立っているAの方に望遠鏡を向けて覗きました。 
 雪に覆われた地面と枝葉に雪をかかえた木立が見えますが、ポールもAの姿も見えません。 
 少し望遠鏡を動かすと、ロン毛の頭が見えたので、 
 次に、ポールを探して目盛りを読むためにピントを合わせました。 

 (あれ?) 
ピントが合うと、俺はおかしなことに気付きました。 
 俺たちはヘルメットを被って測量をしていたのですが、 
 Aはなぜかメットを脱いでいて、後ろを向いています。 
それにAの髪の毛は茶髪だったはずなのに、今見えているのは真っ黒な髪です。 
 (おかしいな) 
 望遠鏡から目を上げると、Aがメットを被り、こっちを向いて立っているのが見えました。 
が、そのすぐ後ろの木立の隙間に人の姿が見えます。 
もう一度望遠鏡を覗いて少し動かしてみました。 



234 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[] 投稿日:03/02/10 11:44 
女がいました。 

 立木に寄りかかるように後ろ向きで立っています。 
 白っぽい服を着ていて、黒い髪が肩を覆っていました。 
 (こんな雪山に・・・なんで女?) 
 俺はゾッとして望遠鏡から目を離しました。 
 「おーい!」 
 Aが俺の方に声を掛けてきました。 
すると、それが合図だったかのように、女は斜面を下って木立の中に消えてしまいました。 

 「なにやってんスかー。はよして下さいよー。」 
 Aのその声で、俺はわれに返りました。 

コンパスを読んで野帳に記入した後、俺は小走りでAのそばに行って尋ねました。 
 「今、お前の後ろに女立っとったぞ、気ぃついてたか?」 
 「またそんなこと言うて、止めてくださいよー。」 
 笑いながら、そんなことを言っていたAも、俺が真剣だとわかると 
「・・・マジっすか?イヤ、全然わかりませんでしたわ。」 
と、表情が強ばりました。 



235 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[] 投稿日:03/02/10 11:44 
Aと俺は、あらためて木立の方を探りましたが、木と雪が見えるばかりで女の姿はありません。 
 「登山してるヤツとちゃうんですか?」 
 「いや、そんな風には見えんかった・・」 
そこで俺は気付きました。 
あの女は、この雪山で一人で荷物も持たず、おまけに半袖の服を着ていたんです。 
 「それ、ほんまにヤバイじゃないっスか。気狂い女とか・・・」 
 Aはかなり怯えてました。 
 俺もビビってしまい、居ても立ってもいられない心持ちでした。 

そんなことをしているうちに、周囲はだんだん暗くなって、とうとう雪が降ってきました。 
 「はよ終わらして山下ろ。こらヤバイわ。」 
 俺たちは慌てて測量作業を再開しました。 

 天候はドンドン悪化して、吹雪のようになってきました。 
ポールを持って立っているAの姿も見にくいし 
 アッという間に降り積もる雪で、小径もわかりづらくなってきました。 
 携帯も圏外になっていました。 
 俺は焦ってきて、一刻も早く山を下りたい一心でコンパスを据え付けました。 
レベルもろくに取らずに、Aの方に望遠鏡を向けようとしてそっちを見ました。 

すると、さっきの女がAのすぐ後ろに立っていました。 



236 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[] 投稿日:03/02/10 11:45 
今度は前を向いているようですが、吹雪のせいで良く見えません。 
 Aは気付いていないのかじっと立っていました。 
 「おーい!」 
 俺が声をかけてもAは動こうとしません。 
すると、女のほうが動くのが見えました。 
 慌てて望遠鏡をそっちに向けてビビリながら覗くと 
女は目を閉じてAの後ろ髪を掴み、後ろから耳元に口を寄せていました。 
 何事か囁いているような感じです。 
 Aは逃げようともしないで、じっと俯いていました。 
 女は、そんなAに囁き続けています。 

 俺は恐ろしくなって、ガクガク震えながらその場に立ち尽くしていました。 
やがて、女はAの側を離れ、雪の斜面を下り始めました。 
すると、Aもその後を追うように立木の中へ入って行きます。 

 「おーい!A!何してるんや!戻れー!はよ戻ってこい!」 
しかし、Aはそんな俺の声を無視して、吹雪の中、女の後を追いかけて行きました。 
 俺は、測量の道具を放り出して後を追いました。 
 Aはヨロヨロと木立の中を進んでいます。 

 「ヤバイって!マジで遭難するぞ!」 
このままでは、自分もヤバイ。 
 本気でそう思いました。 
 逃げ出したいっていう気持ちが爆発しそうでした。 
 周囲は吹雪で真っ白です。 



237 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[] 投稿日:03/02/10 11:45 
それでも、何とかAに近づきました。 

 「A!A!しっかりせえ!死んでまうぞ!」 
すると、Aがこっちを振り向きました。 
 Aは虚ろな目で、あらぬ方向を見ていました。 
そして、全く意味のわからない言葉で叫びました。 

 「*******!***!」 

 口が見たこともないくらい思いっきり開いていました。 
ホンキで下あごが胸に付くくらい。 
 舌が垂れ下がり、口の端が裂けて血が出ていました。 
あれは、完全にアゴが外れていたと思います。 
そんな格好で、今度は俺の方に向かってきました。 

 「・・・****!***!」 

それが限界でした。 
 俺は、Aも測量の道具も、何もかも放り出して、無我夢中で山を下りました。 
 車の所まで戻ると、携帯の電波が届く所まで走って、会社と警察に電話しました。 



238 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[] 投稿日:03/02/10 11:46 
やがて、捜索隊が山に入り、俺は事情聴取されました。 
 最初は、あの女のことを、どう説明したらよいのか悩みましたが 
結局見たままのことを話しました。 
 警察は淡々と調書を取っていました。 
ただ、Aに女が何かを囁いていた、というところは繰り返し質問されました。 

 翌々日、遺体が一つ見つかりました。 
 白い夏服に黒髪。 
 俺が見た、あの女の特徴に一致していました。 

 俺は警察に呼ばれて、あの時の状況についてまた説明させられました。 
その時に、警察の人から、その遺体についていろいろと聞かされました。 
 女の身元はすぐにわかったそうです。 
 去年の夏に、何十キロも離れた町で行方不明になっていた女の人でした。 
ただ、なぜあんな山の中に居たのかはわからない、と言うことでした。 
 俺は、あの時のことはもう忘れたい、と思っていたので 
 そんなことはどうでもエエ、と思って聞いていました。 

けれど、一つ気になることがありました。 
 女の遺体を調べたところ、両眼に酷い損傷があったそうです。 
 俺は、Aのヤツそんなことをしたのか、と思いましたが 
 どうも違ったみたいで、その傷は随分古いものだったようです。 
 「目はぜんぜん見えんかったはずや。」 
 警察の人はそう言いました。 



239 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[] 投稿日:03/02/10 11:47 
結局、Aの行方は、今でもわかっていません。 
 残された家族のことを考えると、Aには生きていて欲しい、とは思いますが、 
あの時のことを思い出すと、正直なところ、もう俺はAに会いたくありません。 

ただ、何となく嫌な予感がするので、先週、髪を切って坊主にしました。 

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