アメリカのとある町で,消防士学校を
優秀な成績で卒業した青年と,その母が暮らしていた。
消防士という職業はアメリカでは非常にステータスが高いらしく,
母にとって青年は近所のだれもがうらやましがる自慢の息子だった。
ある日町で火事が発生し,青年は消防に初出動した。
そこで消火活動のサポートに回ったのだが,
簡単な作業をミスしてしまい,消火中に放水が止まってしまった。
結局大事には至らなかったものの,リーダーに大目玉を食らい,
その日以来,青年に出動が求められることはなくなった。
火事が起きるたび出動する同僚たちを横目で眺めながら,
日々,机に向かいただの雑用をこなす毎日。
そんな息子の状況は近所にも知れわたり,
羨望はいつしか嘲笑に代わっていた。
青年は母に「仕事をもうやめたい」と相談した。
すると母は消防署に乗り込み,「うちの優秀な息子を出動させろ!」と
リーダーや署長を相手に,烈火のごとく怒鳴りつけた。
455 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2011/08/18(木) 00:19:44.38 ID:F/yLkGfW0 [2/3回(PC)]
その後,大きな火事が発生し,たまたま人手が足りなかったこともあり,
母の要求通り,リーダーは青年にも出動を求めた。
その時にはミスをすることはなく,消火活動のサポートとして活躍した。
リーダーにも褒められ,青年は仕事への意欲を完全に取り戻し,
「サポートだけではなく最前線で消火する仕事がしたい」と母に話した。
すると母は再び消防署に乗り込み,「息子を最前線に回せ!」と署長に要求した。
なかなか首を縦に振らない署長だったが,
署長の過去の不祥事までをも調べ上げ,それを盾に脅す母を相手に
ついに音を上げ,その要求を受け入れた。
青年は,その時期に多発していた大きな火事の消火を
全て最前線で成功させるなど,目覚ましい活躍を見せ,
消防署にはなくてはならないほどの存在へと成長し,
新聞にもその功績が取り上げられた。
456 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2011/08/18(木) 00:20:00.69 ID:F/yLkGfW0 [3/3回(PC)]
ある日,青年と母が暮らす家に突然,警察が訪れた。
警察は家に乗り込むなり,母に銃を突きつけ,手錠をかけた。
母は何かを覚悟したかのように無表情でそれを受け入れた。
何が何だかわからず,混乱している青年に,警察はこう告げた。
「ここ数日多発していた火事は,君の母がやったことだ。」
母は息子を活躍させる,ただそれだけのために
ガソリンをまき,幾度となく大きな火事を起こしていた。
それは,一連の不審な火事の原因を探るべく設置された
監視カメラの映像ではっきりととらえられていた。
幸い,人に直接被害が及ぶような火事ではなかったため,
母は懲役120日で済んだが,結局,青年は消防署を辞め,町から姿を消した。
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