とある女子高校で、不登校になった生徒がいた。
彼女はブサイクと言ったらブサイクに失礼と言えるほどの容姿だった。
性格も悪く、友達は黒魔術と拷問器具。当然クラス中からひどいいじめを受けた。
いじめが始まってから半年ほどたち加害者側にほんの少しの飽きが生まれた頃、
彼女は突然学校に来なくなった。
誰もが彼女の不登校に納得していたし、教師すらあまり気にかけてはいないようだった。
その数週間後。
いじめっこの一人だったK子は帰り道で彼女を見かけた。
K子は無視して通り過ぎようとしたが、
彼女がとっていた異様な行動に気付き、自転車を停めた。
彼女はちょうどなわとびをするみたいに
マンホールの上でピョンピョンはね続けていた。
空中の一点を見つめ、とても楽しそうな表情で。
「ねぇ」K子は半ば好奇心、半ば馬鹿にしたような気持ちで聞いた。「アンタなにしてんの?」
彼女はK子に少しも関心を示さずにピョンピョンと同じ場所ではねていた。
「シカトすんなよ」
K子は無視されたことに腹を立て、自転車から降りて彼女に近づいた。
「おーい」
彼女は答えない。
「オイ」K子は彼女の肩をつかもうとしたが、すぐに振り払われた。
そこで彼女が何かを呟いていることに気がついた。
118 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2008/04/13(日) 14:40:38 ID:sgfDTiEX0 [3/5回(PC)]
「きゅう、きゅう、きゅう、きゅう」
彼女は跳ねると同時に確かにそう呟いた。
「きゅう?なにそれ、呪文?キモッ」
K子は毒づいてみたが、
彼女は相変わらず楽しそうに一点を見つめ、跳ね続けている。
「きゅう、きゅう、きゅう、きゅう」
「どこ見てんの?」
彼女の見つめる先には何もない。
ただ一面に広がる茶畑があるだけだった。
彼女がこんなにも楽しそうに何かをするのを始めて見たような気がした。
彼女の無垢な表情を見つめるうちに、
K子はこの奇怪な行動を自分もやってみたいなと思った。
最初は小学生のイタズラのようなほんの小さな好奇心でしかなかったが、
不思議とその気持ちは膨れ上がっていき、
やがてやらずにはいられない、やらなければならないと考えていた。
マンホールを探した。すぐ近くにそれはあった。
彼女と同じように茶畑を見つめ、跳ねてみる。
勿論「きゅう、きゅう、きゅう」と呟きながら。
楽しい。かつてこれほどまでに楽しいと思ったことがあっただろうか。
いやない。
K子はこの世のものとは思えないほどの快楽を味わいながら、
これが彼女にしてきたイジメに対する贖罪になればいいな、と思った。
「きゅうきゅうきゅうきゅう」
「きゅうきゅうきゅうきゅう」
120 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2008/04/13(日) 14:54:54 ID:sgfDTiEX0 [4/5回(PC)]
だんだんと跳ねる速度があがっていく。息切れもしないし、汗もかかない。
楽しい。
K子は視線を彼女の方へ移した。彼女はとっくに茶畑など見ておらず、跳ねてもいなかった。
ただK子を見つめ、笑っていた。
先ほどまでの無垢な笑顔ではなく何かしら卑猥な出来事を期待する少年のような目で。
K子は跳ねることをやめようとした。とっくに冷めていた。
しかし体が言うことを聞かない。
跳ね続けてしまう。抗えない。呟いていた。
「きゅう、きゅう、きゅう、きゅう」
彼女はゆっくりとK子に近づき、鞄から火かき棒を取り出すと、
K子の足元にあるマンホールに引っ掛けた。
ずれたマンホールに足が当たり、一瞬よろめきそうになるが、
K子の体は跳ねることをやめようとしない。
「きゅう、きゅう、きゅう、きゅう」
やめて助けてごめんなさい謝るから許して私のせいじゃないよ助け
て助けてお願いします仕方がなかったからいや死にたくないおかあs
彼女はマンホールをスッと横に引いた。そしてもと通りにはめておいた。
いじめっ子の一人だったS子は、やはり帰り道で彼女を見かけた。
彼女はマンホールの上でピョンピョン楽しそうに跳ねていた。
「なにしてんの?気持ち悪っ」
S子は蹴飛ばしてやろうと思い、彼女に近づいた。
彼女は宙の一点を見つめ、何かを呟いていた。
「10、10、10、10」
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