N西T志は、かけもちのバイトで坊主の経験あり。
坊主と言っても、僧籍とかは何もない。
頭を丸刈りにして坊主の格好をし、葬儀会場で祭祀をやるというバイトだ。
地位も低い。
セレモニー・スタッフの現場チーフからは、裏で厳しく管理されてる。
まぁ、ニセ坊主だ。
でも彼なりに、当時はニセ坊主として精勤に励んでた。
仕事と関係くても、講話とか法話をネットや図書館で調べて勉強していた。
百均でお経を見つけた時は即日、店頭にあった分を全種類コンプリートした。
密教の印を覚えたりして、オタク女の患者職員から面白がられていたりもした。
ある時、N西は診察室へ呼び出された。
そしてあの護符を託されて戻ってきた。
その護符は、受診患者がリサイクル・ショップで買ったものだった。
護符を買った日の晩から、黄色い人影がたくさん出るようになったから、処分したいとのことだった。
N西は受診患者と院長の前で俄か坊主っぷりを披露し、護符の処分を託されたのだった。
この護符は今まで、幾度も譲渡を断られてる曰くつきの品だった。
受診患者は、寺、教会、大きい神社、大阪の占い師などを訪ねて回った。
いずれも、そっち方面に強いとされるところばかりだったが引き受け手はなかった。
N西もそれを聞かされ上機嫌になり、みんなに自慢しながら護符を弄んでいた。
26 : 本当にあった怖い名無し@\(^o^)/[sage] 投稿日:2015/03/05(木) 22:39:54.72 ID:DZkg4bL20.net [3/5回]
翌々日(次の出勤日)、N西は憔悴していた。
昼前には仕事も投げ出し、静養室のソファーで爆睡していた。
まるで二晩分の睡眠を一気に取り戻そうとするようだった。
その日を境に、N西はおかしくなった。
それでもクルマや原付をそつなく運転することができるのは、不思議だった。
薬漬けや深酒が原因なら、こうはならない。
1ヶ月もしないうちに、N西は受診専用患者になる事を検討し始めていた。
そんなときN西は――当時側近でもなかったのに――至急で診察室へ呼び出された。
そこでなぜか、前回の受診患者から「護符を返却するように」要求された。
N西は院長と交渉して許可を取って、原付で自宅まで護符を取りに戻った。
彼の自宅は、クリニックから車でも20分以上かかる。
院長が指示したわけでもないのに、こういうことするのは異例の行動だった。
受診患者も2時間近く、Eフロアで座って待っていた。
N西に護符を託しても、自作自演の局留郵便で郵便局に留め置いた時ぐらいの効果しか無い、と仰る。
N西が戻って来る直前、Eフロア、クリニック、院内薬局、喫煙室で無線機が同時に怪音を発した。
後にも先にも、無線機が全機同時に異なる雑音を大音量で発したのは一度だけ。
その日はみんなで、「護符を引き取りに来てもらえて本当に良かった」
「(護符を)焼却してしまわなくて本当に良かった」と口々にN西を励ました。
このエピソードは、以上です。
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