2016年6月15日水曜日

【恐怖体験】姉の様子が最近変だ

239 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[] 投稿日:03/06/28 23:51
姉の様子が最近変だ。
キッチンのテーブルに腰掛け、口をポカーンと開け、
 空ろな目つきで視線を泳がせている。
 以前は風呂場や自分の部屋をうろついていたが、この
何日かはキッチンにいついている。

 去年母方の祖母が亡くなったが、あの時のことが本当だった
 のだろうか。
 祖母は意識が混濁する前に、僕を枕元に呼び寄せ、確かに言った。

 「あの子(姉)もかわいそうだけど、逆恨みされるおまえも不憫だよ。


240 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[] 投稿日:03/06/28 23:52
おばあちゃんが一緒に連れて行くから、それまで辛抱してな」

 姉と僕は異父姉弟だった。
 四つ年下の僕は両親から可愛がられたが、姉はそうじゃなかったの
 だろうか。
 十代後半には家を出て男と暮らし始めたが、両親は真剣に将来を考え、
 必死に引き止めた。
 高校も中退し、警察から補導されるまで荒れていた姉は、両親に反抗し
 て聞く耳を持たなかったというのが事実だと思う。

その姉が再びうちに戻ってきたのは、自身の葬儀のときだった。
 深夜に同乗していた男の車が交通事故を起こし、即死だった。
お通夜が終わり、弔客がすべて引き上げ、家族だけで過ごした夜
のことを、僕は忘れられない。


241 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[] 投稿日:03/06/28 23:52 
真夜中、客間の六畳で誰かの声がした。 
 僕は疲れきって寝ている両親をそのままにして、一人で部屋へ行った。 
そこには、姉がドライアイス入りのお棺に安置されている。 
 怖くはなかった。 
 十年以上一緒に暮らして、家族仲の良い時期もあった。 
 姉は中学に入った頃くらいから僕と口を聞かなくなったが、 
 激しく反抗したのは母親だった。 
 僕は姉のことが嫌いじゃなかった。 
 憧れみたいなものもあったような気がする。 

 僕は好きだった姉に、最後の挨拶をしておこうと思った。 
 姉は事故の際ひどい怪我を負い、顔半分に包帯が巻かれていた。 
それでも奇跡的に、右半分はかすり傷ひとつなかった。 


242 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[] 投稿日:03/06/28 23:53 
お棺の開き扉をそっとあけ、昔の面影が脳裏によみがえろうと 
 する刹那、信じられないことが起こった。 

 姉の閉じられた瞼が、ぱっちりと開いた。 
 白濁した瞳がゆっくりと僕を捉え、口角が震えている。 

 僕は思わず顔を横にして、聞き耳を立てた。 
 姉が生きている。その奇跡を確かめたかったからだ。 

 「おまえも連れて行く」 
 呪詛の言葉が姉の口から漏れた。 
 僕は驚いて後ずさりし、少し離れた所から姉を見つめた。 

 姉は目を閉じたままだった。 

 僕は両親が寝ている部屋に戻り、がたがたと震えていた。 
 明け方になって気持ちが落ち着き、幻覚を見たのだと思った。 


243 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[] 投稿日:03/06/28 23:53 
今では、それが幻覚じゃなかったことが分かっている。 
 姉は僕の前に時々現れ、にらみつけることもあるし、悲しげに 
見つめることもある。 
 僕に何かを言いたいのだろうが、声をかけられないようだ。 
それでも、姉は僕に会いたがっているような気がしていた。 

・・・・その姉が最近変だ。 
やはり祖母が連れて行こうとしているのだろうか。 

 姉の姿がフェイドアウトするのを確認して、僕は真夜中のキッチン 
 から立ち去ろうとした。 
イスをテーブルに戻して振り返ると、そこに祖母がいた。 

 「今すぐこの家からお逃げ」 


244 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[] 投稿日:03/06/28 23:58 
祖母は僕にそう言った。 
 「あの子はおまえを連れてくつもりだよ」 

 僕は一瞬のうちにパニックに陥った。祖母はまるで生きている 
 かのようだった。 
 「全部あの子の父親が悪いんだ」 
 父親・・・?つまり僕の母親の元夫に当たる人のことか? 
「あの男が血筋を絶やそうとしている」 

 僕は夢を見ているような気がして目を閉じた。 
 頭を振って再び目を開くと、なぜか母親が立っている。 
 夢遊病者のようにふらふらと体を揺らしながら、僕の方に近寄ってきた。 
そして、突然こちらをカッと睨み付けたかと思うと、 
 男の低い声で語りかけてきた。 

 「一緒に死ぬんだよ」 
 母親の手には包丁が握られていた。

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